放射性セシウム除染布の開発

ナノ分子を実用化して社会貢献

出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120531-00000063-mycomj-sci

2012年5月28日プレスリリース

「放射性セシウム除染布開発」
雨どいの放射能汚染水を飲料水基準値以下に

-放射性セシウム除染布を開発-

https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/publication/topics/2012/20120528press1.pdf

2012年11月27日プレスリリース

「低コストな除染材の大量供給が可能に」

-放射性セシウム除染布、量産工程を確立-

https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/publication/topics/2012/20121127press1.pdf

内容

福島第一原子力発電所における未曾有の事故以降、放射性物質による環境汚染が深刻な問題となっています。なかでも半減期が長いセシウム137イオンを水や土壌から除くことが最重要課題です。東京大学生産技術研究所の化学系有志研究グループは、東日本大震災が発生した2011年3月から本研究を開始し、放射性セシウム吸着効果のある人工青色顔料「プルシアンブルー」を繊維に固定化する新しい方法を開発しました。

プルシアンブルーとは、紺青、ベルリンブルーなどとも呼ばれる顔料です。一般的に、フェロシアン化カリウムと塩化第二鉄から合成されます。適切に合成すれば非常に安定で、難溶性です。陽イオンを取り込む性質があり、とくにセシウムイオンを取り込みやすいことが知られています。

本方法により作製した放射性セシウム除染布は、他の陽イオンが多量に共存していても、微量のセシウムイオンを選択的に回収できます。

また、東京大学生産技術研究所と小津産業株式会社は、放射性セシウム吸着効果のある人工青色顔料「プルシアンブルー」となじみやすい不織布を用いることで、放射性セシウム除染布の量産工程を確立しました。

今回使用した不織布はプルシアンブルーが外れにくく、丈夫で軽く、扱いやすくなっています。従来品に比べ低コストで大量に生産できるようになると見込まれ、放射能汚染水・汚染土壌などの除染を加速するものと期待されます。

約20ベクレルの放射能を示す雨どいの水1リットルに、20グラムの除染布を一晩浸したところ、放射能は検出限界(8ベクレル)以下になりました。つまり、飲料水の基準値(リットルあたり10ベクレル)よりも低くすることに成功しました。

関連論文

  • 石井和之、小尾匡司、赤川賢吾、藤井隆夫、藤田洋崇、高橋勇介、黒岩善徳、市原孝之、榎本恭子、立間徹、工藤一秋、迫田章義
    “低コストな放射性セシウム除染布の開発”
    配管技術, 55, 1-4 (2013).

報道

  • 「除染に有効なぞうきん開発 東大生産研 セシウムを吸着」朝日新聞、2012.5.28
  • 「水・土壌の除染布開発」毎日新聞、2012.5.29
  • 「セシウム吸着する布 東大開発」読売新聞、2012.5.29
  • 「雨どいの水を規制値以下に 放射性セシウム効率除去」科学新聞、2012.6.8
  • 「<除染布>土壌、水から効率よく除去東大生産技術研が開発」Yahooニュースなど、2012.5.28
  • 「セシウム除染布大量生産に成功」毎日新聞、2012.11.28
  • 「放射性物質吸着の布 低コスト量産報確立」日経産業新聞、2012.11.28
  • 「セシウム吸着不織布 量産化に成功」日刊工業新聞、2012.11.28
  • 「セシウム吸着布を大量生産=除染加速へ商品化」THE WALL STREET JOURNAL、2012.11.27
  • 「セシウム吸着布 大量生産成功」Yahooニュースなど、2012.11.28
  • 「低コストで大量生産成功」テレビ朝日、2012.11.27