ガン治療を志向した生体機能分子の開発

@ビタミンCバイオイメージング用蛍光プローブの開発

ビタミンC(アスコルビン酸)は、良く知られている必須の栄養素である。さらに近年、ビタミンCの高濃度投与がガン治療等に効果的であることが報告され、注目されている。

しかし、このような重要性にもかかわらず、生体内機能解明に有効であるビタミンC検出用蛍光プローブは開発されていなかった。

生体環境に適したビタミンC検出用蛍光プローブを開発し、ガン細胞HeLa中のビタミンCをバイオイメージングすることに成功した。これは、@不対電子スピンを有し、A蛍光を消光し、BビタミンCと反応する性質を併せ持つ安定有機ラジカルと蛍光色素を相互作用させる分子設計によるものである。

生体組織透過性の高い赤色光を利用していることから、生体組織へビタミンCを添加した際の様々な効果を調べる新しい"道具"としての応用が期待される。

K. Ishii, K. Kubo, T. Sakurada, K. Komori, and Y. Sakai
"Phthalocyanine-Based Fluorescence Probes for Detecting Ascorbicacid: Phthalocyaninatosilicon Covalently Linked to TEMPO Radicals"
Chem. Commun., 47, 4932 (2011).

  

A光線力学的治療用光増感剤の研究

生体組織透過性が高い630nm以降に強い吸収を持つPc誘導体などの分子群は、光線力学的癌治療(PDT: 癌細胞に蓄積した光増感剤のレーザー照射により生成する一重項酸素が癌細胞を攻撃)用の光増感剤として有用である。光増感剤の吸収係数を大きくすることで、効率良く光毒性の原因である活性酸素・一重項酸素を生成できる。

一方、表面の光増感剤が光を強く吸収するため、深部まで光が到達しないという問題点も指摘されている。そのため、光治療が終了するまでは安定に一重項酸素を発生することが望まれる一方、治療終了後は分解して、深部まで光が到達することが望ましいというジレンマがあった。

そこで、RuPcのCO錯体を提案した。このRu錯体は、@脱カルボニル反応は、可視光−定常光では起こらないが、赤色光パルスレーザーによる段階的2光子吸収で、効率よく進行する、ACO脱離によりピーク波長の吸収が大きく減少する等の特長を有する。

これらの性質を利用し、以下の光治療法を提案した。@RuPcを腫瘍組織に吸着させ、定常光照射(一重項酸素発生)により表面の腫瘍組織を治療→Aパルス光照射(脱カルボニル反応)により、表面の吸光度減少→B再び定常光照射(一重項酸素発生)により深部の腫瘍組織を治療。

このRuPc錯体は、子宮頸癌由来細胞HeLa内においてもパルスレーザー選択的吸光度減少を示すことが確認されている。

石井和之
"重原子効果を用いない効率的一重項酸素生成"
生産研究, 60, 160-163 (2008).

K. Ishii, M. Shiine, Y. Shimizu, S. Hoshino, H. Abe, K. Sogawa, and N. Kobayashi
"Control of Photobleaching in Photodynamic Therapy Using Photodecarbonylation Reaction of Ruthenium Phthalocyanine Complexes via Stepwise Two-Photon Excitation"
J. Phys. Chem. B, 112, 3138 (2008).

K. Ishii, A. Takayanagi, S. Shimizu, H. Abe, K. Sogawa, and N. Kobayashi
"In Vitro Photodynamiceffects of Phthalocyaninatosilicon Covalently Linked to 2,2,6,6-Tetramethyl-1-Piperidinyloxy Radicals on Cancer Cells"
Free Radical Biol. Med., 38, 920 (2005).

K. Ishii, H. Itoya, H. Miwa, M. Fujitsuka, O. Ito, and N. Kobayashi
"Relationship between Symmetry of Porphyrinic π-Conjugated Systems and Singlet Oxygen (1Δg) Yields:Low-Symmetrical Tetraazaporphyrin Derivatives"
J. Phys. Chem. A, 109, 5781 (2005).

K. Ishii, S. Takeuchi, S. Shimizu, and N. Kobayashi
"A Concept for Controlling Singlet Oxygen (1Δg) Yields by Nitroxide Radicals: Phthalocyaninatosilicon Covalently Linked to Nitroxide Radicals"
J. Am. Chem. Soc., 126, 2082 (2004).

H. Miwa, K. Ishii, and N. Kobayashi
"Electronic Structures of Zinc and Palladium Tetraazaporphyrin Derivatives Controlled by Fused Benzo-Rings"
Chem. Eur. J., 10, 4422 (2004).

K. Ishii, S. Hoshino, N. Kobayashi
"Photodecarbonylation of Ruthenium Carbonyl Octaethylporphyrin via Stepwise Two-Photon Absorption of Visible Light"
Inorg. Chem., 43, 7969 (2004).

  

テーマ

ページのトップへ戻る